如何お過ごしですか? 3回連続10cmです。
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地味な土木小ネタシリーズ。今日は仮締切です。
地中に物を作る時は土を掘る。
地中に物(=構造物:黄色)を作るとします。当然、地面を掘る(=掘削:茶色)ことになりますね。
土を掘る時はまっすぐ(鉛直に)掘ると土がぼろぼろと崩れてきます。一番わかりやすいのが海岸の砂です。砂をまっすぐに掘ろうとしても次から次へと崩れてきますよね。
よって、多少なりとも勾配(=自立勾配)を取らなくてはなりません。
また物を作るための作業スペースも必要です。
物の大きさ+作業スペース×2+勾配分×2=掘削影響範囲です。
地面は最低でもこの掘削影響範囲だけは掘られるわけです。
すぐ近くに家があるぞ。
じゃ、掘削影響範囲の中にとなりの家が建っていたらどうします?
このやり方だと家の基礎を壊してしまって、家が傾く(下手したら壊れる)でしょう。 家が道路だとしても同じく、道路が狭くなるので車の通行に支障が出ます。
ただし、構造物はどうしてもこの位置に作りたい。
どうしましょう?
鋼矢板の出番だ!
そんな時には鋼矢板というものを使います。
土は鉛直に掘るとぼろぼろと崩れますが、この鋼矢板なる物を利用することによって、結果的に鉛直に掘ることが出来ます。
これだと先ほどの勾配分がなくなって、掘削影響範囲が小さくなりますね。となりの家も大丈夫って寸法です。
鋼矢板とは?
鋼矢板とは、U型を扁平させたような断面を持つ鉄の物体です。こういうものです。写真は6個重ねた状態ですね。
これを地面の中に埋め込んで壁を作ります。
http://www.tiyhirose.co.jp/lineup/lineup_01.html
鋼矢板を使うとこんな感じ。勾配なしでまっすぐ(=鉛直)に掘れます。
この写真は掘る深さは浅い=土圧は小さい。
土圧とは:水にも水圧があるように土にも土圧というものがあります。土圧とは、地盤内における土による圧力、土が押す力。
鋼矢板だけでは不十分。相方が必要だ!
ただし、厄介なことに鋼矢板は掘る深さが深くなるに従い大きな土圧を背負う運命になるのです。いくら鉄でできているとはいえ、土に押されて図中の緑矢印の方向に変位しようとします。鋼矢板が変位するという事は、それにつられて家も同方向に変位します→NG。
そこで、鋼矢板の変位を最小限に抑えるためにつっぱり材(=支保工)というものを設置します。H型鋼を加工したものです。こいつが両側から土圧で押される力(=変位しようとする)に抵抗して変位を最小限に押さえます。
この鋼矢板と支保工を組合わせたもの全体が仮締切です。
実際の仮締切の施工例。
イメージ図。
今までは断面で説明しましたが実際に作る物は立体ですので、当然3次元です。 こんな感じ。透明が構造物、ねずみ色が鋼矢板、赤が支保工、黒い所が土です。
構造物を作るためにみんなが頑張って周りの土を留めていますね。
実際の施工時の写真です。
写真は掘る深さが深いので、つっぱり材を上下に2段入れています。
これから構造物を作るところです。
しっかりと土も崩れなくして物をつくる空間が確保されていますね。
おさらい:仮締切の主な役割。
土を鉛直に止める=最小限の掘削影響範囲。
回りに影響を与えない=道路・家の安全確保。
作業空間を確保する=構造物を安全に作るためのスペース確保。
(上には書いていませんが)地下水を遮断=ドライな状態で安全に作業が出来るようにする。
編集後記
淡々とやりましたが、仮締切はいかがでしたか?
土木構造物の基礎部分は地中に作られる場合が多いです。そんな時に仮締切をやってその中で作ります。
ただし、作って終わったら矢板も抜かれるし、支保工も撤去されて、掘ったところはもとの地面になり、地中に埋まらない部分だけが地面から突っ立ている状態になります。
工事中にしか見ることのできない仮締切。けどいい仕事しているんですよー。