おっさんのblogというブログ。

下らない事に心血を注ぐおっさんの話、たまには聞いてみてもいいんじゃない。

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『ちょっと変わった日本地図』を紹介します。

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如何お過ごしですか? 3回連続10cmです。

 

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

 

今日は一般にはあまり見られないと思われる日本地図を紹介します。

社会(地理)の本にも載っていないと思います。

 

 

 

 

これが『ちょっと変わった日本地図』です。

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日本がA1・A2・B1・B2・Cの5地域に色分けされていますね。また5地域の区分けは必ずしも県境とは一致していません。

 

5地域に分けている根拠は『強い地震動が発生する可能性の高さ』です。色が濃い地域の方が『強い地震動が発生する可能性が高い』ということを示しています。(地震動=地震とお考え下さい。)

色が濃い地域=強震地域=地震の揺れが強い、とは違います。ここで着目しているのは強い地震動が発生する可能性の高さです。

 

 

この日本地図は下記の『主要なプレート境界型の地震震源域』を加味して作られています。

日本地図には他の要因も付加されているので、ピッタリではないですが震源域の位置と色の濃さが概ねリンクしていることが分かります。

f:id:sankairenzoku10cm:20180813115940j:plain



 

で、この『ちょっと変わった日本地図』でなにをどうすんの?

この地図は橋梁設計に使います。いわゆる橋の設計ですね。

日本は世界でも有数の地震国です。それだけに日本で橋が壊れるパターンは地震に起因する場合が最も多いのです。よって、橋(分野は違いますが建物も)を設計する際には必ず地震の影響を考えています。地震がきても壊れないような橋を作るために。

地震の影響を考えて設計することを、一般に耐震設計(地震に耐える設計)と言います。裏技で免震設計(地震を免れる設計)というのもありますが、ここでは耐震設計という表現で説明します。この両者のちがいは機会があったら後日。

 

ただしこの地図のように『強い地震動が発生する可能性の高さ』の違いによって日本を5段階に分けて評価しています。

この地図の目的は、日本中の橋をひとくくりにして全部が同じ地震に耐えるような橋にすることは合理的ではない=『強い地震動が発生する可能性』の高低によって橋の強度を変える=色の濃い地域にはより強い橋をつくるという事です。

 

 

これは先ほどの地図の凡例ですが、

f:id:sankairenzoku10cm:20180813120542j:plain

( )で書かれた数値が、色の濃い地域ほど大きいことが分かります。

 

例えば一番色が濃いA1地域だと(1.0,1.2,1.0)、一番色が薄いC地域だと(0.7,0.8,0.7)です。C地域に比べてA1地域の数値は約1.5倍です。

 

この( )内の数値は設計する段階での係数です。係数が大きいほど強い橋ができます。つまり全く同じ規模の橋を設計してもA1地域はC地域よりも約1.5倍もの強い橋ができるわけです。A1地域の方が『強い地震動が発生する可能性が高い』のですから。

 

 

参考までにみなさんのお住まいは何地域でしょうか?

地図では地域が太い線で区切られていますし、それは県境と一致しないと言いました。地図だけでは分かりづらいので正式に市町村単位の細かい区分けがあります。それが下の表です。

みなさんのお住まいは『強い地震動が発生する可能性』が高い地域ですか、低い地域ですか?頭の片隅にちょこっと置いていただいていても、今後損をすることはないと思います。

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ちょっと待った!日本をたった5地域にしか分けないの?乱暴なんじゃないの?

①日本の国土ってひとつも同じところはないのだから、同じ地域でも数km離れたら地震の揺れ方が違うかも。5地域じゃなくて100地域(いや無限に)に分けた方がいいんじゃないの?

 

②あるいは『強い地震動が発生する可能性』で分けているだけなので可能性の低い地域にも強い地震が発生する事が全く無いとは言えません。じゃ敢えて分けずに全部一律にして、どこにどんな地震が来ても対応できるようにした方がええんとちゃうん?

 

はい、乱暴です。ただバランスも考えています。

おっしゃる通り、設計って結構乱暴なんです。設計ってほとんど統計や実験に基づいた仮定で成り立っています=実際に不合理な部分や無駄な部分もあります。現に日本中を5地域にしか分けていないし、実際の橋や建物をスケールダウンした実験結果の数値を基に構造計算して、それを形にして実際にその上を人や車が通るのですから。

ほんとにそれでいいの?ってくらい乱暴ですね。

ただし、乱暴ですが色々なパラメータのバランスも考えざるを得ません。

わかりやすい例を挙げます。

 

例-1

地震に関して言えば、全ての橋や建物はそれらが作られる場所一点のピンポイントの地震の揺れ方で設計できているわけではありません。

ご存じのように地震って厄介です。だいぶ研究は進んでいますが、橋や建物が作られる場所一点に、いつどんな地震が起きるかは誰にも分かりません。

その一点にどんな地震が起きてどんな揺れ方をするかというデータを得るために、いつ起きるか分からない地震を指を咥えて待っているわけにもいきません。そのいつ起きるか分からない地震をターゲットにして耐震設計をしているのですから。

ある程度起こりうるであろう地震を仮定しないと設計はできません。

そういう意味で①のように無限に条件設定するという事はデータもありませんし、現実的に無理です。せめて『過去の統計』や『実験結果』を前提に『プレート境界型の地震震源域』を加味した上で最適だと考えられる5地域に区分しているのです。

 

例-2

また、設計も工事も100%国の税金でやります。

設計は係数を変えて構造計算するだけですが、できる橋は係数が大きいほど頑丈になるので当然お金も高いです。

②のように日本中一律頑丈な橋や建物を作るのもいいのですが、『強い地震動が発生する可能性が高い』ところと『可能性が低い』ところの橋の値段が同じというのはちょっとおかしいし、お金的にもキツイと言う事です。

『可能性が低い』ところを捨てているという事ではありません。『可能性が低い』ところも耐震設計を考えてはいるが、『可能性が高い』ところは少し頑丈にしているという事です。

 

橋は上記のようなことを考慮して設計されています。

まとめると、

橋の設計では必ず地震の影響を考えています=耐震設計を行っています。

橋の耐震設計では日本を5地域に分けて、『強い地震動が発生する可能性』の高低を加味して、その地域に見合った強さの橋を設計しています。

 

 

編集後記

 

地震国日本の橋の設計事情、なんとなくお分かりいただけたでしょうか?

 

統計と仮定でしか成り立たない設計に乱暴感は否めませんが、今の日本の現状ではこれが限界です。

 

最後になりましたが、記事に添付した資料は『道路橋示方書・同解説Ⅴ耐震設計編 (公益社団法人 日本道路協会)』より抜粋しました。