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地味な土木小ネタシリーズ。
先日逆T式擁壁と言う構造物の紹介をさせていただきました。
今日は逆T式擁壁をもう少し突っ込んで解説します。ちょっとややこしいかも分かりません。
上記、『逆T式擁壁-その1。』と絡めて見ていただいたらよりよく分かると思います。
逆T式擁壁の用語。
逆T式擁壁とは下図のような構造物です。
鉛直に立っている壁を竪壁(たてかべ)、フラットな部分を底版(ていばん)。さらに底版の竪壁より前面側を底版前趾(ていばんぜんし)、背面側を底版後趾(ていばんこうし)と言います。
安定計算をします。
背面に土を背負っています(=土圧)。これが厄介な大きな荷重(=外力)です。
それを逆T式擁壁自身が支えます。人間でいえば背中から強い力で押されてるけど、ちゃんと立てってるよ、みたいなイメージです。
背面側から土圧で押されます。前面側にスライド(H)・回転(M)しようとします。=前面に向かって滑ろうとします。前面に向かって転ぼうとします→滑ったり、転んではNGです。
実際には底版後趾上の土の重量があるので、鉛直力(V)も作用します。
前面の土にも右方向への土圧がありますが、これは逆に滑ろうとする・転ぼうとする挙動の抵抗力になります。前面の地面が無い方がより危険(=滑る・転ぶ)になるので構造計算するときは下面まで下げます=前面の抵抗を無視=全体に滑る・転びやすくなる→こう考えておけばより安全な構造物が出来る。
このV・H・Mが作用する状態で安定計算を行い滑らないか?回転して転ばないか?全体に沈下しないか?をチェックします。
安定計算結果。
安定計算を行いスライドしない・回転しない・沈下しないことが確認できると、V・H・Mよって下図のように地盤反力が発生します。
全体が左向きに回転しようとしているので底版前趾先端に大きな地盤反力が発生します。
人間でも真っすぐ立っていて後ろから強い力で押されると、そのまま立っていようとしたら足のかかとよりも足の指に力が入るでしょう、それと同じです。
各パーツの断面計算をします。
スライド・回転・沈下しないことは確認できましたが、たとえば下図のように竪壁が折れたら困りますね。背面の地面も崩れてしまいます。
すべてのパーツがそのままの形を維持して初めて上記安定計算が成り立ちます。よって、各パーツ(竪壁・底版前趾・底版後趾)が大丈夫かチェックします。
竪壁の断面計算。
底版上面に支持された片持ちばりに土圧が作用します。背面から土圧で押されるのでつけ根に下図の向き(左回り)のモーメント:Mが発生します。
このモーメントに対して鉄筋コンクリートとして安全かどうかチェックします。
下図の向きにモーメントが発生しているという事は竪壁の背面側が引張側、前面側が圧縮側です。背面側(=引張側)に鉄筋を配置して引張力に抵抗させます。
ちなみに、コンクリートはその性質上圧縮には抵抗できますが、引張に対してはほとんど抵抗できません。そこで、引張側に鉄筋を配置して引張力に抵抗させます。
底版前趾の断面計算。
理屈は竪壁と同じです。竪壁前面に支持された片持ちばりに地盤反力が作用します。下面から地盤反力で押し上げられるのでつけ根に下図の向き(右回り)のモーメント:Mが発生します。
底版前趾の下側が引張側、上側が圧縮側です。下側(=引張側)に鉄筋を配置して引張力に抵抗させます。
底版後趾の断面計算。
竪壁背面に支持された片持ちばりに後趾上の土と地盤反力が作用します。通常土の重量の方が影響が大きいので、つけ根に下図の向き(右回り)のモーメント:Mが発生します。
底版後趾の上側が引張側、下側が圧縮側です。上側(=引張側)に鉄筋を配置して引張力に抵抗させます。
配筋図。
上記、安定計算・各パーツの断面計算が全て終わり、構造的に安全性が確認できたら、現場で施工できるように配筋図を作ります。
断面計算の項で、竪壁は背面、底版前趾は下面、底版後趾は上面に鉄筋を配置すると書きました(図中の赤いライン)が、それは形を維持するための鉄筋であり、他の部分にもコンクリートの乾燥収縮によるひび割れを防止するなどのために縦横無尽に鉄筋が配置されます。
実際の施工の様子。
下の写真は実際の工事で配筋図を元に鉄筋を組み立てている様子です。鉄筋を組み立てて終わったら、型枠設置、コンクリートを打設して形を作ります。
http://www.geocities.jp/penta_wb/kousoku5_nakayama_ic/03_photo.html
編集後記
逆T式擁壁、いかがでしたか?コンクリートで出来ていると思いきや、中には鉄筋をいっぱい配置して頑丈にしています。
ちょっと突っ込みすぎた感がありますが、何かの参考になれば幸いです。